大陽署

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 我輩は巡査である。バッジの星はまだひとつしかない。ウチの署長は五歳のガキだ。俺も最初赴任したときは笑っちまったが本当だ。おまけにガキはどういうわけか飛び級で東大を卒業したキャリアらしい。いくら最近の警察が何でもありだからといって、そりゃあんまりだ。このガキはテレビ付のセンチュリーで毎日、送り迎えさせている。キャリアだから不祥事に巻込ませることなく無傷で本庁に送り返さなければならない。
 副署長は頭の禿げた五十八歳定年前のノンキャリアだ。ジジイと孫みたいなもんだ。
 俺は「危ない刑事」の館ひろしになりきって署の廊下を歩いた。
自分で言うのも何だが、結構イケてるつもりだ。もっとも、この前、「館ひろしに似てるだろ」
 と久しぶりに会った妹に言ったら、
「うぅん、お父さんにそっくり」
 と言われてしまった。
 親父が館ひろしに似てるわけがない。
 今日も退屈な一日だった。世間では物騒な事件が新聞記事をにぎわしているが、此処、亀有公園前七曲警察署ではそんな事件とは無縁だ。ここでの一番の仕事は年に数回来る、本庁のキャリアの接待、それから署長のご機嫌取りだ。
 ここの署長はなぜか五歳の子供だ。冗談のようだが本当だ。私も最初、赴任した時は信じられなかった。襟には星が三つ、すなわち警視の階級章が光っている。さすがにキャリアではないらしい。
 署長の大好物はペロペロキャンディとパフェだ。いつも口の周りをベタベタにしている。パフェは良いとして今時、渦巻き模様のペロペロキャンディなど売っている店はおいそれと見つからない。買いに行くだけでも一苦労だ。署長は特に緑と白の渦巻き模様が好きらしい。一度、赤と白の渦巻きを買ってきたら、
「次から緑と白にしてくれ」
 と不満そうに言われた。ガキのくせして気難しい。
 署長は自分のことをボスと呼ぶことを俺たちに求めた。今は無きテレビドラマの見過ぎだろうか。このガキは年齢(とし)からして、そんなドラマなんざ見ているはずはないのだが。
 ボスはガキのくせしてカネに汚い。俺たちの手当をピンハネするくらいは楽勝でやってのける。
 オービス(自動速度取締機)のフィルムも値段が高いので、ここ二、三ヶ月入れてない。スピード違反はやり放題だ。暴走族の検挙は現場の俺たちが足で捕まえるほかないのだが署長がこんな感じだから誰も本気で取り締まる気などない。取り締まるふりをするだけだ。
 抜き打ちの交通違反検挙をやることになった。保険な外交員のように何件あげたかグラフにして壁に張り出してある。ネズミ取りする場所は警察署の真ん前だ。間抜けなことに警察署の前をシートベルトを付けずに走るクルマがある。それをパクるのだ。
 
 今年の正月にはお年玉として二万むしられた。呉はなんだかんだ理由をつけて五万ほどむしられたらしい。呉は気が弱いから何も言えなかった。五歳のガキだから親やジイサン、バアサンからもナンボか掠めたらしい。
 ネーちゃんは御祝儀として乳を吸われたらしい。本番をやろうとしたが、
「今、生理なの」
 で何とか逃げ切ったらしい。思う存分、乳を吸った後、
「サーモンピンクの乳頭はええのー」
 とほざいたという。
 署長じゃなきゃ、とっくにネンショーに送ってやるぜ。
 ここじゃあ、セクハラだって何だってありだ。署長がこんなだから俺も先週、しょっぴいたコロンビア人の立ちんぼにチンボををねぶらせた。ラテンアメリカではおまわりや刑務官がこのくらいのことをするのは当然だからヤツも抵抗なく舐めやがった。今度またパクってやろう。

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